企業を運営する際、金融機関からの借り入れを行う機会は多いでしょう。
銀行などから資金調達を行う場合、設備資金と運転資金の用途について詳しく尋ねられます。
これらを誤解していると、資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があるため、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。
そこで今回は、事業資金・設備資金・運転資金の違いについて詳しく解説します。
また、運転資金の目安や計算方法もまとめていますので、ファクタリングなどの手法も含めてご参考にしてください。
事業資金・設備資金・運転資金の違いとは?
これら3つの資金の違いを知ることは、資金調達を成功させる上で不可欠です。以下で詳しく確認していきましょう。
事業資金とは何か?
事業資金とは、ビジネス全般に必要となる全ての資金のことを指します。
業界やビジネスの規模により、必要となる資金額は大きく異なります。
これは、オフィスの賃料や導入する設備の費用がそれぞれ異なるためです。
正確な資金計画を立てるためにも、「設備資金」と「運転資金」を明確に区別して考える必要があります。
設備資金とは何か?
設備資金とは、ビジネスで必要となる設備や機器を購入・導入するための資金です。
一般的に、貸借対照表の固定資産に計上される項目がこれに該当します。
金融機関から借入を行う際には、何に対していくらの設備資金が必要かを明確に提示しなければなりません。
これは、その投資がビジネスの安定や成長にどれだけ寄与し、返済能力があるかを評価するためです。
資金使途が明確であれば、返済計画も立てやすくなります。
融資を申請する際には、見積書や契約書、製品カタログなどの資料を用意しておくと良いでしょう。
具体的な設備投資の例
設備資金に該当する主な費用項目は以下の通りです。
- 店舗やオフィスの敷金・保証金
- 内装工事やリフォームの費用
- 設備の購入費用(電話機、プリンター、デスク、チェア、パソコンなど)
- ウェブサイト制作やシステム開発費用
- 業務用ソフトウェアの導入費
例えば、建設業では重機やトラック、飲食業では厨房機器や冷蔵庫、美容業ではシャンプー台や鏡などが設備資金に該当します。
業種によって必要な設備は異なるため、事前に必要なものをリストアップしておきましょう。
運転資金とは何か?
運転資金とは、ビジネスを継続的に運営するために必要な日常的な資金のことです。
一般的に、損益計算書の費用として計上される項目がこれに当たります。
運転資金は設備資金と異なり、詳細な使用用途を一つ一つ明確にする必要はありませんが、大まかな必要額は把握しておくべきです。
具体的な運転資金の例
運転資金に該当する主な費用項目は以下の通りです。
- 商品の仕入れ費用
- オフィスの家賃、光熱費、通信費
- 従業員の給与や福利厚生費
- 外注先への支払い
- 広告宣伝費やマーケティング費用
運転資金はその用途により、さまざまな種類に分類されます。
運転資金の分類方法1:資金の性質による区分
運転資金は、その性質に応じて大きく4つに分類されます。
経常運転資金
経常運転資金とは、日常的なビジネス活動で常に必要となる資金です。
商品の仕入れ費用や人件費など、毎月発生する費用がこれに該当します。
一般的に「運転資金」と言えば、この経常運転資金を指すことが多いです。
増加運転資金
増加運転資金とは、ビジネスの拡大や取引量の増加に伴って追加で必要となる資金です。
新たな受注や販売拡大に対応するための仕入れ増加や人員増強などが該当します。
入金までのタイムラグをカバーするために必要な資金とも言えます。
減少運転資金
減少運転資金とは、ビジネスの縮小や売上減少時に必要となる資金です。
売上が減少しても、固定費である人件費や家賃などはすぐには削減できないため、資金不足に陥る可能性があります。
そのような状況を乗り切るために必要なのが減少運転資金です。
季節変動運転資金
季節変動運転資金とは、特定の季節やイベント時に必要となる資金です。
ボーナスの支給や季節商品への対応など、一時的な資金需要に対応するためのものです。
運転資金の分類方法2:費用の性質による区分
運転資金は、費用が変動費か固定費かによっても分類できます。
変動費
変動費とは、売上の増減に応じて変動する費用です。
具体的な項目は以下の通りです。
- 原材料や商品の仕入れ費用
- 外注費や業務委託費
- 販売手数料や取引手数料
- 商品の配送や輸送費用
残業手当なども、業務量に応じて発生するため変動費に含まれます。
固定費
固定費とは、売上に関係なく一定額発生する費用です。
具体的な項目は以下の通りです。
- 従業員の基本給や福利厚生費
- オフィスの家賃、光熱費、通信費
- 広告宣伝費や販促費用
ビジネスを継続するために不可欠な費用であり、売上がゼロでも発生します。
必要な運転資金の目安とその計算方法
ここでは、ビジネス運営に必要な運転資金の目安と具体的な計算方法について説明します。
手元に確保しておきたい運転資金の目安
確保すべき運転資金の額は、ビジネスの特性や業種によって異なります。
入金サイクルが短いビジネスであれば、手元資金はそれほど多くなくても問題ありませんが、入金までの期間が長い場合は多額の資金が必要です。
取引先からの入金遅延などのリスクも考慮し、最低でも3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を準備しておくことが望ましいです。
運転資金の具体的な計算方法
運転資金は以下の計算式で求められます。
運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務
売上債権は、商品の販売やサービス提供後に未回収の売掛金を指します。
棚卸資産は、販売予定の商品や製品の在庫を意味します。
仕入債務は、仕入れた商品や原材料の未払い分、つまり買掛金のことです。
これらの数値を貸借対照表から抽出し、計算式に当てはめて運転資金を算出しましょう。
融資における運転資金と設備資金のポイント
資金調達において、運転資金と設備資金は審査基準や返済条件が異なります。
そのため、融資を受ける際にはこれらを明確に区別し、適切な計画を立てる必要があります。
運転資金と設備資金の返済期間の目安
運転資金の返済期間は一般的に3年から7年程度です。
短期的な資金需要であるため、返済期間も比較的短く設定されます。
一方、設備資金の返済期間は10年から20年程度が目安となります。
長期的な投資である設備資金は、返済期間も長めに設定される傾向にあります。
ただし、耐用年数が短い資産の場合は返済期間も短くなるため、注意が必要です。
融資後の資金用途の変更は避けるべき
融資を受けた後で資金の用途を変更することは、金融機関からの信用を損なう行為です。
金融機関は資金使途に基づいて審査や条件設定を行っています。
例えば、設備資金として借り入れた資金を運転資金に流用することは、今後の融資に悪影響を及ぼす可能性があります。
資金調達時の計画に沿って、資金を適切に活用しましょう。
まとめ
事業資金は、ビジネス活動全般に必要な資金であり、「設備資金」と「運転資金」を含みます。
設備資金は事業運営に必要な設備や機器の購入に充てる資金で、運転資金は日常的なビジネス活動を維持するための資金です。
資金調達を成功させ、資金繰りを安定させるためには、これらの違いを正しく理解し、適切な計画を立てることが重要です。
ファクタリングなどの資金調達手段も活用し、ビジネスの成長と安定を目指しましょう。