事業を運営する中で、思いがけない費用の発生によって急に資金を調達する必要に迫られることがあります。このような状況で十分な資金が手元にない場合、迅速な資金繰りが求められるでしょう。
しかし、資金調達の手段は多岐にわたるため、「最速で資金を得る方法は何か」と悩むことも多いものです。
本記事では、急ぎで資金を確保するための選択肢について詳しく解説します。
融資、ファクタリング、さらには手形割引といった幅広い手段を取り上げているため、自社に最適な方法を見つける参考にしてください。
急場をしのぐための資金調達手段
短時間で必要な資金を確保する際に検討すべき手段は以下の通りです。
資金化のスピードに応じてまとめています。
[その他]家族や友人からの借入
急な資金不足に対応する場合、家族や信頼できる友人からの借入を検討するのも一つの方法です。
双方が合意できる条件を設定できれば、最短でその日のうちに資金を得られる可能性があります。
ただし、個人間の取引であるため大きな金額の借入は難しいことが一般的です。
「少額でも迅速に必要な資金を調達したい」と考える場合には適した選択肢となるでしょう。
[資産処分]手形を利用した資金化
手形を用いた資金調達は、銀行や専門業者を通じて未決済の手形を現金化する方法です。
通常1か月以上の時間を要する受取手形も、即日で資金化できる場合があります。
この方法は特に、既に受取手形を所持している企業におすすめです。
調達可能な金額は手形の額面に依存し、そこから手数料(銀行で2%~3.5%、専門業者で2.5%~15%)が引かれます。
[融資]事業者専用ローン
事業者向けの融資商品であるビジネスローンは、書類の簡素さや審査のスピードが魅力で、最短で即日に資金を受け取れることも特徴です。
主に法人経営者や個人事業主が利用でき、一般個人は対象外となっています。
金融機関ごとに異なりますが、概ね500万円~1,000万円の資金調達が可能です。
[資産売却]2者間契約のファクタリング
売掛金を活用する2者間ファクタリングは、事業資金を迅速に調達する手段として有効です。
この形式では、ファクタリング会社と直接契約を結び、即日で資金を得ることが可能です。
調達可能な金額は売掛債権の額面が上限となり、それ以上の調達はできません。
なお、ファクタリング手数料が発生する点に注意が必要です。
[資産売却]不要資産の現金化
金融機関や外部の助けを借りず、自社内で資金を生み出す方法も考えられます。
例えば、不動産の売却や在庫資産の処分、さらには法人保険の解約などです。
これらの方法で調達できる金額は手段によって異なりますが、大きな額を得られる可能性があります。
[資産売却]3者間ファクタリング
3者間ファクタリングは、利用者、ファクタリング会社、取引先の3者間で契約を結ぶ形式です。
2者間ファクタリングに比べて手数料が低く抑えられる利点があります(手数料は約2%~9%)。
ただし、契約に取引先の承諾が必要なため、資金化までに数日かかることもあります。
[融資]売掛債権を担保にしたローン(ABL)
売掛債権担保融資(ABL)は、売掛債権を担保に金融機関から資金を借り入れる方法です。
不動産を保有していない場合や、売掛債権があるものの現金不足に陥っている場合に適しています。
対象となる売掛債権
ABLで活用される売掛債権は、以下のような種類が挙げられます。
- 販売代金の分割払いに基づく債権
- 物流サービスに関連した運送料債権
- 医療機関の診療報酬債権
- 建設請負代金に基づく債権
ただし、譲渡禁止特約が付されている債権は対象外となるため、注意が必要です。
ABLとファクタリングの違い
ABLとファクタリングは、いずれも売掛債権を活用する資金調達手段ですが、仕組みに違いがあります。
ABLは「融資」であり、金融機関が売掛債権を担保に資金を貸し付ける形式です。一方で、ファクタリングは「債権の売却」であり、売掛金を買い取ることで資金を提供します。
また、ABLでは企業の信用力が重視される一方で、ファクタリングでは取引先の信用が主な審査対象となるため、赤字企業でも利用できるケースが多いです。
[融資]プロパー融資
プロパー融資は、信用保証協会の保証なしで銀行から直接借り入れる形式の融資です。
この手段は信用度の高い企業に限られ、審査のハードルが高いことが特徴です。
メリット
プロパー融資を利用することで、保証料を節約できる点が主な利点です。また、この融資を受けられる企業は、銀行から高い信用評価を受けているため、今後の取引にも良い影響を及ぼすでしょう。
デメリット
プロパー融資の難点は、審査に時間がかかる点と、返済期間が短く設定されることです。そのため、計画的な返済が求められます。
[融資]不動産を担保にしたローン
不動産担保ローンは、土地や建物などの資産を担保に金融機関から借り入れる融資です。
この手段は、比較的低金利でまとまった資金を調達できる点が特徴です。
メリット
不動産担保ローンの利点は、金利が低く、長期間の返済計画を立てられることです。
例えば、返済期間を10年以上に設定することも可能で、毎月の返済負担を軽減できます。
デメリット
審査に数日かかるため、即日資金調達には向いていません。また、不動産の評価額によって借り入れ可能な金額が決まるため、期待する金額に達しない場合があります。
[融資]信用保証付きの融資
信用保証付き融資では、信用保証協会が返済不能時のリスクを負担するため、実績が少ない企業でも利用しやすいのが特徴です。
どんな企業に適している?
設立間もない企業や、金融機関との取引歴が浅い場合でも、信用保証付き融資を活用すれば資金調達が可能です。
さらに、この融資を通じて銀行との取引実績を築き、将来的により有利な融資条件を引き出すことが期待できます。
デメリット
信用保証付き融資は、信用保証協会と金融機関の両方の審査を通過する必要があるため、融資実行までに時間がかかることが難点です。
緊急時でも安心して資金調達を行うために
緊急時の資金調達では、悪徳業者に引っかからないよう注意が必要です。
詐欺被害を防ぐためには、業者選びに慎重になり、信頼できる金融機関や専門家に相談することが重要です。
悪徳業者の特徴
悪徳業者の特徴として、以下の点に注意が必要です。
- 金利や融資条件が極端に不明確
- 市場金利とかけ離れた高金利
- 担当者の態度や説明が曖昧
相談先を確保しておく
資金調達に困った際は、地元の信用金庫や日本政策金融公庫、専門家に相談しましょう。
プロのアドバイスを受けることで、適切な手段を選びやすくなります。
まとめ
緊急の事業資金が必要な場合、今回紹介した方法を参考に、自社に最適な手段を選んでください。
特に、ファクタリングやビジネスローンは即日調達が可能で、迅速な対応が求められる状況で役立ちます。
ただし、資金調達を繰り返すと金利や手数料が積み重なり、財務状況を圧迫する可能性があります。
慎重に計画を立てて行動しましょう。
売掛債権担保ローン(ABL)の利用を検討する場合
売掛債権担保ローン(ABL)は、売掛債権を担保として金融機関から資金を借りる方法で、現金が不足している企業にとって頼りになる手段です。
ABLの仕組みと特徴
この融資形式では、売掛債権を担保に設定し、金融機関から必要な資金を借り入れます。
売掛債権の取引先が法人である場合に限り、適用が可能です。
以下のような売掛債権が対象となります。
- 商品販売の代金に基づく債権
- 医療報酬を含むサービス代金債権
- 建設請負費用に関連する債権
ABLの注意点
ABLを利用する際には、譲渡禁止特約が付いている売掛債権は対象外であることに注意が必要です。
また、企業自身の信用が審査対象となるため、安定した経営状況を示す必要があります。
[資産売却]売掛債権の譲渡を活用するファクタリング
ファクタリングは、売掛債権を専門の会社に売却して現金化する手段で、ABLと似ていますが仕組みが異なります。
ファクタリングの基本
ファクタリングは融資ではなく、債権譲渡契約に基づいて売掛債権を資金化します。
企業の経営状況ではなく、取引先の信用力が審査対象となるため、赤字の企業でも利用可能な場合が多い点が大きな特徴です。
主に以下の形式があります:
- 2者間ファクタリング:迅速な資金調達が可能
- 3者間ファクタリング:手数料が低い
どちらを選ぶべきか
資金調達のスピードを優先する場合は2者間ファクタリングを、コストを抑えたい場合は3者間ファクタリングを選択すると良いでしょう。
親族・知人からの借入のリスクと対策
親族や知人からの借入は、柔軟な条件で短期間で資金を得られる手段として利用されることが多いです。
しかし、信頼関係を損なうリスクがあるため、以下の点に留意する必要があります:
- 借入条件を文書で明確化する
- 返済計画を詳細に説明する
- 無理のない範囲で借入金額を設定する
事業資金を調達する際の注意点
資金調達に際しては、事前の計画とリスク管理が不可欠です。
不正業者への警戒
市場金利とかけ離れた高金利や曖昧な条件を提示する業者には注意が必要です。
正規の業者であるかどうかを確認し、疑問があれば専門家に相談しましょう。
専門家への相談
地方自治体や日本政策金融公庫、信用金庫の窓口では、資金調達に関するアドバイスを受けることが可能です。
プロの知識を活用することで、最適な手段を選びやすくなります。
まとめ
事業運営中に突発的な資金不足に直面することは珍しくありません。
そのような状況に備えるため、ファクタリングや手形割引、信用保証付き融資、不動産担保ローンなど、さまざまな選択肢を把握しておくことが重要です。
特に、資金調達のスピードが求められる場合には、即日対応可能な手段を優先して検討しましょう。
ただし、借入や手形割引を繰り返すことで金利や手数料が増え、長期的には経営を圧迫する可能性があります。
常に綿密な計画を立て、慎重な判断のもとで資金調達を進めることを心がけましょう。